糖尿病の運動療法

 

 


1.糖尿病における運動の必要性


糖尿病の患者さんの多くは、大きく分けると

  1. 過剰な食事の摂取
  2. 運動不足
  3. その両方から起こるもの

の3つに分けられます。

故に、糖尿病は日常生活上での不注意で起こる病気として生活習慣病の1つに挙げられています。
この様な糖尿病の患者さんの多くは、身体の中で血糖をコントロールするインスリンの分泌量が少なくなっていたり、インスリン自体は十分に分泌しているにも関わらず、身体の中で上手く働かなくなっているために、血糖値をコントロールすることが出来ず、血糖値が高くなってしまい糖尿病と診断されてしまうのです。
 そのため、糖尿病を治療するためには血糖値を上手くコントロールすることが重要になってきます。


 血糖値をコントロールするためには様々な方法があります。
運動療法もその中の1つで、運動をすることにより血液中の余分な糖分(ブドウ糖)を消費することで血糖値を下げる効果があります。また、運動をすることにより体の中でインスリンの働きが良くなるという効果もあります。

2.運動の効果


①血糖値を下げる
②体の中でのインスリンの働きが良くなる
③筋肉がつく
④体力の向上
⑤心臓や肺の働きが良くなる
⑥血液の循環が良くなる
⑦血圧が下がる
⑧動脈硬化を予防する
⑨ストレス解消などの気分転換


糖尿病の運動療法     糖尿病の運動療法     糖尿病の運動療法


3.運動の実際

 

糖尿病の運動療法
●一人で出来る運動を選び、毎日同じだけ行う
 毎日のことなので、場所を選ばず、いつでもどこでも出来る運動を選びましょう。もし毎日が無理でも、2日に1日は行います。
糖尿病の運動療法
●ウォームアップとクールダウンを
 運動は1日30分が目安で、朝晩2回に分けてもかまいません。運動を行うときは、ゆっくりスピードを上げて(ウォームアップ)、終了時はゆっくりスピードを下げていきます(クールダウン)。ウォーキングにする場合、1回15分~20分を目安にして、1日1万歩を目安にしてもいいでしょう。
糖尿病の運動療法
●運動の強さは、きつすぎず、楽すぎず
 「少し汗ばみ、隣の人とラクに会話ができる程度」が運動の強さの目安です。運動の後、とても疲れてしまうようなら、セーブしましょう。
糖尿病の運動療法
●食後1~2時間後に行う
 食後30分頃から血糖値は上昇し始め、1~2時間で血糖値は最大値を示します。そのため食後1時間~1時間半位が運動に一番適している時間帯です。また、運動による低血糖予防も出来ます。
糖尿病の運動療法
●運動日誌をつける
運動習慣を身につけるためと、運動によって体調が悪くなることを防ぐために、最初は日誌をつけましょう。


運動日誌例図糖尿病の運動療法

糖尿病の運動療法     糖尿病の運動療法    糖尿病の運動療法糖尿病の運動療法  

 

4.運動の注意事項


①医師の診察を受け、運動の許可、運動の処方をしてもらって下さい。

②次の様なときには運動を休みましょう。
 ・血糖値が250mg/dl以上あり、尿中のケトン体がプラスのとき
 ・血圧がいつもより高く180mmHg以上あるとき
 ・脈拍がいつもより速く、1分間に100拍以上あるとき
 ・風邪、頭痛、熱、腹痛、下痢、寝不足、二日酔いのとき

③運動中に次のような症状が現れた場合、ただちに運動を中止して下さい。
 ・胸が締め付けられるように苦しくなったとき
 ・急に脈が速くなったり、途切れたりするとき
 ・めまいがしたとき
 ・冷や汗が出たとき
 ・いつもと違う強い疲れを感じたとき
 ・強い空腹感や震えを感じたとき
 ・関節や筋肉に強い痛みを感じたとき

④運動の前後に必ず準備・整理運動を行いましょう。

⑤運動は他人と競うものではありませんからマイペースに行いましょう。

⑥食事療法、薬物療法は必ず守ってください。

⑦運動は継続して行って下さい。
 運動を行うと一時的に血糖値は減少します。また、人によりばらつきはありますが、運動を開始してから約1週間~1ヶ月程度で血糖は落ちついてきます。しかし、運動を中止すると1週間程度で運動の効果は消失してしまい、元の状態に戻ってしまいます。そのため、運動を継続して行う必要があります。

⑧低血糖に注意して下さい。
 インスリンや薬を使用している人は運動中特に低血糖に注意して下さい。症状としては、胸の痛み、強い空腹感、ふるえ、動悸、冷や汗、吐き気、目のかすみなどです。この様な症状を感じたらすぐに運動を中止し、ペットシュガーやジュースなどで糖分を補給し、十分に休養を取ってください。

以上の注意事項を守って運動を行って下さい。