第57号 「近年の在宅医療」
 
木谷 栄一  福井県小児療育センター所長 (2001年)

 近年、飛躍的に進歩した医療の一つに在宅医療があります。
 在宅医療というと、専門的医療を「自宅」という生活の場において行い、患者さんの社会復帰を可能とし、生活の質の向上を図ることにあります。この医療には、患者さん自身が治療法に対し積極的に情報取得して、正しい理解をしていただくことが肝要です。さらに、年々進歩改良される医療機器や、これをできるだけ実行しやすいように保険制度によって支援すること、また、専門医を中心に介護・看護師などの幅広い支援と多くの家族の方々がこの医療を支えるといってもよいかと思います。
 実際に行われている医療内容を見ますと、糖尿病患者などの自己注射、腎疾患に行われる自己腹膜灌流・血液透析、重症の肺疾患に対しての在宅酸素療法などがあります。また、近年積極的に行われるようになった中心静脈栄養法や経腸栄養法、癌や神経疾患の患者に対する在宅自己疼痛管理法などがあります。これらは、以前入院もしくは通院で行われた医療が在宅で行われることによって、患者さんの社会復帰が可能となり、生活の質的向上が可能になったといえます。
 しかし、こうした医療・医学の進歩や組織改革によって支えられる在宅医療も問題がないわけではありません。現行では、専門医の負担がかかりすぎます。看護師・薬剤師・栄養士などの業務分担を一層拡充し、明瞭な分担が求められています。これらのマンパワーが充実されれば、現場での有効性や自主性が一層進められると考えます。第二に、医療費節約のメリットがありますが、まだ患者の経済負担や家族の介護力に大きく依存し、さらに積極的に進めるためには、現行の保険体制も含めて現行体制の改善が求められます。第三に、在宅医療を患者さんや家族が利用する際に、安心感や信頼感を得る質的補償が問題となります。そのためのスタッフの育成と教育体制をしっかりと確立しながら推進することが重要と考えます。
 21世紀を迎え、我が国における在宅医療は、これらの点を改善しながら、一層拡充していくものと期待しております。

(木谷所長は、福井県立病院長と小児療育センター所長を兼ねておられます。)