第51号  小さいアニー
 
山本 恵子  福井県小児療育センター医療課医長(1997年)
 アメリカは、マサチューセッツ州、ボストン校外の精神病院、その地下室病棟に「小さいアニー」という少女が閉じこめられていました。この少女は、医者からもう治る見込みはないと診断されていました。この地下病棟で一生を過ごすと思われていました。
 そこへ、もう定年間近の看護婦が配属されました。「神がそうされるものなら何でも希望をもつことができるはずだ。」とそう信じた看護婦です。彼女はアニーに食事を持って行くときに、自分の分も一緒に持って行き、アニーと共に食べるようにしたのです。この少女に愛情と希望を少しでも伝えることができるのではないかと考えたからです。
 最初の頃、アニーは近づくものを誰彼となく攻撃したり、あるいは、無視したりしました。この看護婦に対しても同じでした。ある日、この看護婦はチョコレートケーキを持って、アニーの部屋を訪れ、そのケーキを部屋の外に置いたのです。アニーは全く無視していたのですが、翌日、ケーキはなくなっていました。看護婦は木曜日になると必ずチョコレートケーキを持って、アニーの部屋を訪れました。まもなく、病院の医師たちはアニーの変化に気づきました。ついにアニーは、その絶望的な状態が癒されて、家に帰ることが許されるようになったのです。
 ところが、この「小さいアニー」は家へ帰ることをしませんでした。彼女は、自分のいた場所に意義を感じるとともに大きな発見をしたのです。つまり、看護婦が自分の中に息づくものを発見し、それを引さ出してくれたように、他人の中にあるものを発見し、それを成長させることがでさるのではないかと考えるようになったのです。
 そして、「小さいアニー」によって、荒れて誰の手も施しようがなかった三重苦の少女が生まれ変わったのです。その三重苦の少女は、今も世界中で希望の灯火と言われるようになったヘレン・ケラーその人です。
 巻頭言にかえて、本より、抜粋させていただきました。土の中から輝く宝石を見つけだす貴い仕事を讃えつつ。
出典:「成長する人しない人」大橋秀夫著
    新生宣教団p.111〜113