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稲 光彦 福井県特殊教育諸学校長会長(県立清水養護学校長) (1997年) |
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ニンゲン社会は人間の社会、サル社会は猿の社会、タコ社会は?当然、蛸の社会!と思ったら大違い、日本の社会です。
“じゃあ、日本人は蛸?”“う〜ん。”ともあれ津田塾大学教授D.ラミス氏の言葉です。彼によると、例えば日本の企業はそれぞれが独立に活動し、互いに横のつながりのないタテ社会です。しかし、その独立した企業内容を検討し、どの企業に対しても不可欠の共通的指令を出せる支配者すなわちここでは経団連が上にのっかっています。企業を足と見、経団連を頭と見なすと、まさに頭の下にたくさんの足の出たタコの姿に見えると言い、これがタコ社会と彼の名付けたゆえんです。
ところで、研究集録等の報告物をタコの足に見立てて考えたらどうなるでしょうか。その上にのる頭に当たるのは、基礎原理(理論)ということになり、これが不可欠です。それぞれの実例から共通性を抽象して、次の実践に対する根拠を提供する役割をもつからです。タコは足だけ切り取っても動きますが、頭のないタコは食べ物を狙って移動することはありません。
基礎研究というのは基本原理を見つけ出すことです。私たちは学者ではないので理論は得意ではないとはいえ、基礎研究を心掛けたり重視することによって、子どもの身体や行動や心理における違いと共通点の根底にあるものが見えてくるし、日々の実践にも大きく役立ちます。今やそういう意味で個々の実践報告だけでなく、基礎研究も求められていると思います。
教育への情熱が坊彿と伝わってくる素晴らしい報告文を学校の研究集録や研究会紀要で読んでいるとき、基本原理の研究にも手を付ける先生方が増えてくるともっと充実するのにと期待が膨らむのは私だけでしょうか。
障害児・健常児の区別なく、子どもたち同士あるいは人間同士には違いより共通点の方がはるかに多いのです。障害児だから他とは違うはずとかこの子は特別だとかいう考えから発想をスタートさせてしまうと、大きな基礎を見失ってしまう危険に陥ることは多くの識者が指摘しているとおりですし、チョムスキーを借りるまでもなく、『深層』に注目する必要があります。
ときどき自分のスタート地点を見直すことで、新鮮な自分が戻って来るのに気が付さます。 |
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