第46号  制度としての学校を見直す
 
佐藤 直樹  福井県特殊教育諸学校長会長(福井県立盲学校長) (1996年)
 近年、国の内外を問わず世の中の諸情勢は、政治においても経済においても極めて不安定であり、混沌とした状況にあります。
 こうした社会情勢の急激な変化は、教育界にも大きく影響を及ぼすところであります。私が勤務している盲学校にあっても、緊急に対策を講じなければならない焦眉の課題が山積しています。なかでも現在、基本的な課題として、義務教育段階での在簿児童生徒の減少であり、正直言ってこの減少化は、何だか盲学位教育の衰退の兆しのように思えてなりません。
 盲学校の教育は、百有余年に及ぶ歴史があります。視覚障害児の教育のために、この教育の草創期や戦前戦後の苦難の時代を筆舌に尽くしがたい困難を乗り越えながら、充実発展に大きく貢献してきた先人や、それを必死に受け継いできた諸先輩にとっては、この現状の受け入れには耐えがたい思いがあります。
 時代の進展とともに、障害児の教育に村する考え方も多様になってきました。ノーマライゼーションの理念もその一つです。私自身は、この理念を否定するものではありません。むしろこうした理念が一般的な理念として、社会に受け入れられつつあることは、障害者が受けてきた過去の情況を思えば隔世の感があり、それこそノーマルな社会になってきたと感慨を新たにするところです。
 ただ、私たちがしっかり踏まえておかねばならないことは、他国で、どのような状況の中から新たな理念として提唱されてきたのか、その背景を十分考えることなく、ただ万人が認めるところの障害者にとって理想的な理念だということで、わが国の障害者に対する諸施策の、歴史的経緯を蹄まえながら、整備されてきた教育諸施策の理念を否定し、現行の法制度を批判的にみることはどうかと思うのです。
 こうしたことから、派生する諸問題への対応については、ただ私たちの立場や視点だけに立ってノーマライゼーション理念に基づく論理を対立論理として批判するのではなく、時代思想の変化の実態と、ことの本質を十分に考え合わせて、新たな発想により対応していく姿勢が必要だと思います。