第42号  とびっきりの笑顔
 
西野 興五郎  武生市ひまわり作業所 所長 (1995年)
 通所精神薄弱者授産施設の武生市ひまわり作業所は、今、14年の年輪を刻み続けている。私も、この施設を預かることになり4年が過ぎようとしている。
 授産施設とは本来、心身に障害を持ち社会的事情の理由で通常の就労が困難な人達に、その可能性を最大限に生かし「職業及び生活訓練を通じて、人間として生きる為に必要とするサービスを提供すること」を目的とする“通過施設”である。厳しい近年の社会情勢の下、利用生の高齢化・重度化が進み、施設での滞留化現象が目立ち始めた。しかし、この現実問題にもめげず、一般企業への就労に向けてアタックする本人と指導員の二人三脚の情熱には、常に若い樹木が天を指して伸びるような、言葉では言い表せないものがある。 
 一般就労への取り組みにあたっては、本人と保護者、そして担当の指導員の心がひとつになって、「常に燃え続けているか」が決定的な決め手となる。中には「困難のハードル」を一つ一つ越える途中で、心配のあまり精神的重圧に耐えられなくなり、親の方から“白いタオル”が投げられてしまう時もある。しかし、慣れない作業や一般企業での実習の中で嬉しいことをみんなで喜び合い、辛いことは励まし合って困難を乗り越え、施設から巣立っていく彼らの、身体一杯に喜びを表す嬉しそうな笑顔を送り出す時、その感動はいつまでも鮮やかに私を身震いさせてくれる。
 また、社会との壁の厚さの中で、本人の新しい道を求め、やむなく施設変更が行われる。変わっていった本人から、近況の喜びの声を電話や便りで聴かせてもらう時、思わず胸に「ジーン」とこみあげてくるものがある。
 このような毎日の人間模様の中で、宮本武蔵の五輪書にある「振りかざす太刀の下こそ地獄なれ、一歩進めば極楽である」という言葉が、私は好きである。
 すべての利用生が生き生きと生活できることが人権の重要なポイントの一つと考え、施設の特色を出しながら、最良の幸せを追求できる場を提供できるよう努めたい。私にとって「この仕事」は、私を支えてくれる指導員を含めて、とびっきりの笑顔を見つけだす仕事にほかならない。