第32号  皆さん、御苦労様です
 
青木 達雄  社会福祉法人ハスの実の家理事長(1991年)
 ここ数年、教育の面でも、施設や作業所、雇用等の面でも、一段と障害者に対する関心が高まったように思われる。大変喜ばしいことだが、果たして、どれだけみんなに理解されているかとなると疑問が残る。
 私どもの施設を見学した大学生や高校生から書いてもらった感想文を読むと、20年前のそれとほとんど変わっていないことに驚く。共通していることは、ここを訪れるまでは、障害者についてあまり知識がなかったので、なにか怖いような気持ちがして、身構える姿勢だったが、実際にあの人達に接し、言葉を交わすほどに、次第に心もほぐれ、逆に、自分達のセカセカした日常を反省させられたし、むしろ、あの人達こそ、本当の人間らしきを持っているのではないかと思った。今日の見学は、自分にとって大変よかった。大体こんな具合である。
 現実社会は、大変多忙だったり眼先のことにかかわり、じっくり物を考えたり自分を見つめたり出来ない。大学生は、アルバイトに精を出し、適当に遊ぶことに多忙であるし、高校生も、進学だ大学受験だとあわただしい。登校拒否とか、非行化への憂いを聞くにつけても、障害者と日常生活を共にし、教育や生活指導にたずさわる人達は、根気よく、その子の能力を引き出そうと、何度も失望を繰り返しながら努力する。
 障害者教育は、人間をいとおしむ教育の原点のように思う。 
 平均寿命が伸びて、80年時代などと言われるが、人間の生涯は地球の生命からみれば、はかなくも短いものだ。
 心豊かに生きるためにも、お互いは、もっと優しく、隣人のことを思うべきだ。
 20年前の感想と現在の感想が五十歩百歩と言うことは、なにかが欠けているに違いない。
人は誰でも、いつかは老いるし、障害も出てくるものだ。
 自分達の幸せのためにも、障害者教育のことや、人間の生き様について、じっくり考え直すことが必要の時にきていると思う。
 経済大国と言われながら、今一つという感じを取り去るためにも、心豊かな、優しい国でありたい。