第31号  医療のチーム・ワークと人間関係
 
坪田 謙  福井県小児療育センター所長
 障害児の社会参加を図る療育活動は医療・医学を越えた広い範囲にわたり、しかも総合的な活動を必要としている。
 そこで、障害児のニーズに即して、母子保健、児童福祉、学校教育などの法律に基づき、それぞれの対応が進められてきたが、現実には各分野の歴史的背景の違い、行政上の隘路などから、これらの間の交流、協力は必ずしも十分であるとは言えなかった。
 9年前、障害児に必須の保健、医療、福祉教育の相互間の有機的な連携を掲げて、小児療育センターが発足した。その当初から、私の関心の的は実際に仕事を進める複数の組織の専門職の間の協力体制をどうまとめるかにあったが、この視点から経過を眺めると、案ずるより生むが易いと言うのが実感として頷けるように思われる。
 急拵えの寄合い所帯は多くの矛盾も含むが、多数の専門家がその専門知識を持ち寄って、同じレベルの土俵で仕事を進められるメリットは、何にもまさって大きい。そこで毎日顔を合わせるチーム・メンバーの間には、何時の間にか専門性を超えた同憂の士としての共通意識が芽生え、意思の疎通もスムーズになり、遂には相手の腹の中まで読めるような人間関係が生まれてくるのは不思議なことだ。
 今日の小児療育センターと特殊教育センターの相互協調も、実質的にはこのような一人一人の仕事を通しての連携感や、腹蔵なく話し合える気易い人間関係に依存しているように思えてならない。更に、この実情は身近な二つのセンターや養護学校の間だけでなく、同し障害児療育に携わっている多くの施設・機関、または従事する人々の間にも普遍的に言えるのではないだろうか。
 昨年の秋、あたかもこの想いに符合し、チーム・ワークの阿吽の呼吸を示すような「話し合い、わかり合い、分かち合い」を、私達の職場標語として選び出すことが出来たのは近頃の喜ばしい思い出の一つである。