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藤沢 清 福井大学教授(1983年) |
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月日の経つのは早いもので、私が特殊教育の道に足を踏み入れてから、もう20年になろうとしている。その前の約10年間は実験心理学や精神医学の学習をしていたから、全部をあわせると約30年という計算になる。
この30年間に、一体自分は何をして過ごしてきたのだろうかと考えてみた。毎年、いくつかの学会に発表し、また、毎年のように学術雑誌に投稿して論文を発表してきたから、その数はかなりになってきている。数だけは十分になったが、中身はと聞かれるとどうも自信がない。
催眠の生理心理学的研究、睡眠の生理心理学的研究、注意の神経機能の研究、それにポリグラフィによる精神薄弱の研究、というのがこの30年間に手がけてきた研究の主なテーマである。前の3つはヒトの意識に関する研究で、学生時代からの継続した課題であり、精神薄弱の研究は福井大学へ赴任してきてからのものである。しかし、この中のどれをとっても、胸を張って体系的に説明できるものは残念ながらない。
精神薄弱の研究を始めた頃、できれば特殊教育にもっと科学性を高める啓蒙をしたいと思った。
当時は、年輩の教員の方々が泣く泣く担任をさせられ、子どもの教育というよりは自分の不遇を嘆き悲しんでいる状況であったから、特殊教育に科学性の導入どころでなかった。もちろん医学的な検査などはほとんどなされず、精神薄弱もてんかんも、ただ、いわゆるお勉強ができないから特殊学級に入れるというような状況であった。そのような状況であったから、熱心な教師・情熱的な医師の方々と語り合って、何とかこの子どもたちに適切な診断・当を得た指導方針を与えることができないかと考えたものであった。
さて、本年4月、待ちに待った特殊教育センターが小児療育センターの一翼を担いながら発足した。福井県のような小さな県では画期的な出来事で、これまでの関係者の方々の並々ならぬ努力のたまものである。これはまた、医療・教育・福祉が一体となって心身障害児の問題にあたろうということであり、早期発見・早期治療・訓練なども目標の一つになる。しかし、建物やシステムが立派になっても、それだけでは十分でない。長年特殊教育に従事してこられた人々と交際してきて思うことは、心身障害児に対する基本的な見方・考え方が大切なようである。
正しく適切な判断・診断、信頼性、妥当性のある治療・訓練・教育、さらにはあたたかい福祉的処置など、これらが協力的に行われなくてはならない。言うは易し、行うは難し、これら一連の仕事も、これからは特殊教育センターの業務となる。みんなで、この特殊教育センターがますます発展することを期待しようではないか。 |
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