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石原 義紀 福井愛育病院長 (1987年) |
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心身障害児の発生を時期的にみると、周産性・細胞〜胎芽〜胎児期・乳幼児期に原因が存在するわけであるが、中でも周産期における出産時外傷・低酸素症・分娩仮死およびその他の呼吸器病態・妊娠中に発生する先天異常がそのほとんどを占めることは衆知の通りである。
胎内での発見・治療も行われつつあるが、実際には、出生間もなく発見されることが最も多い。私どものように、周産期の医療に力を注いで多数の出産および新生児管理を行っているものにとっては、障害児に最初に遭遇する機会は日常茶飯事といっても過言ではない。しかしながら、障害児であることを初めて告知された両親・祖父母など家族の心労は想像を絶するものがある。告知する私ども医師としても、最もつらい仕事の一つである。家族の落胆・悲しみ・拒否・怒り・逃避・不安・心配の時期を経て、受容・立ち向かい・親としての積極的な治療・教育への努力と、障害児を持ったことによる親の成長の姿は誠に貴いものである。しかしながら、このような経過で成長する親ばかりとは限らないのが現実である。
手と足首から先のない先天性絞扼輪症候群の新生児が生後6日目に退院したが、2・3日後には、警察が「死亡したが何か原因が考えられるか」と訪ねてきた例。手術をすれば延命でき、将来は再手術を行って生活が充実保証された生まれつきの心臓病の新生児が、両親や家族の手術拒否にあい難渋したが、結局は根気よい説得・励ましが功を奏して手術して、事なきを得た例。障害児が生まれたことで家族不和が起こり離縁される例。両親とも養育意欲をなくし病院へ放置するため、やむを得ず里子に出すといった例。先天異常を出産時の障害だと言いはられ、訴訟に持ち込まれそうになった例。唇裂・口蓋裂の幼児が家庭で養育されていて、1歳近くになったとき、急に容態がおかしいと外来を受診したが、体重は3sとやせ衰え餓死状態と思われる例など、挙げればきりがないほどの問題が発生する。
私たちのように、周産期医療に携わる医師の増加、産科・新生児科医療の進歩などで、障害をもつ子どもの身体的な治療は飛躍的によくなったが、一方では、その家族の心の支えとなり指導する立場の専門職の必要性が痛感される。仏教的思想の根付いている福井では、宗教界の方々が、このような方面へ積極的に参画して、家族への早期教育に手助けしていただく方策はないものだろうか。 |
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