この夏、来福した国立小児医療センター長の小林登教授とゆっくり話す機会があった。彼は、幅広い視野を持つ小児科医で、厚生省の「母子相互作用研究班」の班長として6年間に至る学際的でユニークな研究活動をリードしてきた。私もその一員として、いろいろと勉強させてもらえて幸いだった。彼は、また、臨時教育審議会のメンバーでもある。特殊教育について何か要望は?との誘い水においそれと乗って、教育の素人である身もわきまえず、勝手な注文をつけたのが次の2点である。
- 教員になるための一般課程に特殊教育の基礎講座を必修にすること
普通教育が、正常の個を集団として扱うことにメリットを見いだすのに対して、特殊教育は、正常からdeviateした個一人一人について、そのdeviationの質と量をよく把握し、それに応じた一人一人の対応を基盤としながら集団としてのメリットも求めているという点で、大きな考え方の違いがあると思える。そのため、普通教育の中に特殊教育に対する理解がなく、特殊教育が隔離の場であるかのごとき印象すら与えている。一方、母子・家族及び社会との関係を考慮して、障害児はできるだけ早く家庭へ、そして、普通教育の場へ帰すことが望まれている。軽快した障害児を普通教育に受け入れてもらわねばならないケースが増えてきている。この場合、痛感されるのは、普通教育担当者(担任から校長まで)の障害に対する無知と不勉強である。教員を養成する過程で、特殊教育に関する基本的な講義と実習を必須とすることが望ましいと考える。
特殊教育が正常からdeviateした個を対象とするため、一例一例が特殊なのであって、その努力や成果は、教師それぞれの経験の中に埋もれやすく、共通の認識や対応を確立するまでに発展しない。このことは、特殊教育が学問として体系づけられることも困難にしている。現実に役立つ教育のカリキュラムも不充分で、担当者は常に手探りで試行錯誤を繰り返しており、頼りになる指導者の相談相手を求めて苦しんでいるから、特殊教育学の確立が望まれる。また、担当者が、研究会や研修会に出席して指導を受けたり、それぞれの体験を発表し検討し合うことのできるよう、時間と費用を充実してもらいたい。
小林教授、しばらく沈黙の後、「なるほどね。」と一言。
小林先生、よろしくお願いします。
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