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植田 命寧 福井県特殊教育研究連盟会長 (1986年) |
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今年の1月、雪の降り積もったある日、ひとりの幼稚園児が降園の途中迷子になった。毎日通い慣れた道なのにと親はいぶかっていたが、彼には道路の両側に積み上げられた雪で、日頃見慣れた目標物が全然見えなかったのである。1メートルに満たない身長の幼児の視界に入るのは、鉛色の空と白い雪だけだったのだ。文字通り、子どもの視点に立って子どもに対処しなければならないことを教えられた出来事であった。
特殊学級のHとSは、毎朝校門付近に立って、登校してくる教員や友達に明るいあいさつをしながら、校区外から通学してくるRを待っている。ある月曜日、Rが欠席することを知らずに立ち尽くし、全校朝の会に参加しなかった。探していた担任が見つけて厳しく注意したが、後で事情がわかると、叱らなければよかった、友達を待ち続ける温かい気持ちをもっとほめるべきだったと述懐していた。
私たち教師は、一人一人の子どもをよく理解して、その能力や特性を最大限に伸ばすことを使命だと考えている。日々の子どもたちとの触れ合いの中で実践しているつもりでいる。しかし、冒頭にあげた例のように、予想外の出来事に驚いたり戸惑ったりすることも多い。この子はいつもこうだという固定観で見てしまったり、教師の物差しで測ってしまったりしているからである。
教えることは、相手から学ぶことだと言われている。既成概念や慣れで子どもを見ないで、もっと謙虚に子どもから学ぶ努力をしなければならないと思う。
今日も、自閉的傾向のあるKが校長室に入ってきた。そして、並べてあるスポーツ少年団やサッカークラブが受賞した優勝トロフィーのひとつを手に取り、じっと立っている。自分がスポーツ選手になって優勝トロフィーを受けている姿を想像しているのだろうか。
この子どもたち一人一人が持っている夢や希望を最大限に実現させ、その持ち前いっぱいの花を咲かせるためには、もっと子どもを知り、子どもに学ぶ姿勢に徹しなければならないと思う。そして、子どもからもその保護者からも全幅の信頼を寄せられる教師になるよう、いっそう精進しなければならないと思う。 |
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