いしころ2
「人生の石ころpart2」


<失敗という名の石ころ>

12年に一度、市の代表選手として出場する大会がありました。
12年に一度という事はこのチャンスを逃せばもう体力的にも次回は望めないという、貴重なチャンスです。
その5人の中にある人が選ばれました。大会の2ヶ月前に作られたチームです。0からの結束を作らなければなりません。
それぞれ仕事と平行してですから練習は空いてる時間わずかだけ。毎朝3:30には起きて7時まで猛練習です。
同じ様な動作の繰り返し、教官からの気合い入れ、チームプレーの難しさ、意識向上の違いから生ずるズレ、
空いてる夜は選手同士の気持ちのぶつけ合いです。
女はとても入れそうにない世界。「やるとなったら、やるしかないっ!」という根性。
その背後に選手だけの話じゃ済まされないプレッシャー。

その中でもその人は練習開始から2週間めくらいで完璧に出来上がっていました。
5人の中でも優等生だったんです。
指摘されることといったら、気合いの入りすぎや力の入れすぎで目立ってしまうことだけでした。
でも、それも翌日には直ってる。 指の爪の先まで神経が行き届いているようで、頭の中は真っ直ぐにその事だけのようでした。

大会当日、一番くじが回ってきました。
観客もこれから始まる大会の「最初のプレー」を息をのんで見ています。
号令から競技が始まり、それぞれの選手は持てる力を充分に発揮し順調に1つ1つ進んでいきました。
「これは・・・もしかしたら・・・今までにない最高タイムで最高のものを見せる事ができるかもしれない・・・」と誰もがそう思いました。

でも、・・・・そこに、見えない石ころが あったんです・・・

何もかも完璧に、今までの練習にミスなどしたことのないその人が目を疑うような凡ミスをしてしまったんです。
チーム関係者も一瞬目を疑いました。誰もが緊張で息をも忘れるようなその時に、まるで目の前の出来事は悪夢のような・・・

練習でもミスをしたことのないその人にとって、ここ一番の時の凡ミス程、頭を真っ白にさせるものはありません。
でも、その人は冷静にしっかりその後滞りなく続けたんです。
何事もなかったようにいつもと変わりない行動、表情で最後までやり遂げました。

そして、終わってから皆に一言・・「すまんかった!」・・・・・!!
いつもと変わりない表情・・・でも、心の中は思いっきり泣いてました。
それがひしひしと伝わってきたんです。

「ここで泣いても、元に戻れるものでもない!!」
「今まで頑張ってきたチームの皆に、申し訳ない!!」
「激励してくれた関係者に、申し訳ない!!」
「一生懸命教えてくれた人に、申し訳ない!!」

「オレがただひとつ凡ミスをしてしまったばっかりに・・・」

終わった後に、”選手の皆さん、本当にご苦労様でした”・・・の言葉で、その人の目から涙が溢れて、溢れて・・・
思い描いていた結果が一瞬にして崩れていったんです。
”オレが悔しがってどうする!泣いてどうする!ミスしなくて全力で戦った他の選手の方がもっとつらいはずだ・・・”
とその後は努めて明るく振る舞っていました。
でも、心の中は・・・自分を責めて責めてしようがなかったんです。
自分のやった過ちが自分だけの問題じゃ済まなくなっていたんです。

・・・・・”皆に、申し訳ない”・・・・・・

悔しくて、情けなくて、辛い時は思いっきり泣けばいい。
目が腫れるほど泣いて、涙も出なくなったときに ふっと・・・

「何が大切かといえば、それまでの練習の過程であったり、チーム結束の為の努力であったり・・・
成績だけが・・・大会だけが問題じゃない。あなたの気合いは半端じゃなかった。何事にも精一杯取り組んできた。完璧な動作や行動はしっかり皆の目に焼き付いている。それで、いいじゃない。

つらい、悔しいと思う心の中には、オレは本当はもっと完璧にできる人間なんだ。
それを見てもらって認めて欲しい・・・という気持ちがあるからであって、
でも、実際にミスをしたのも自分。完璧にこなしたとしても、それも自分。なんです。

ミスした自分をしっかり見つめこれもオレなんだ!と分かった時に、
「あー、オレも精一杯やったんだ」っていう満足感が現れてきて、
結果になんか振り回されない自分を見つけることができるでしょう・・・。

完璧にこなしすぎて、気持ちに余裕が出てくるから、今度は周りの人の為にいい成績をあげよう・・・
と考えてしまうんです。余裕がなければ、自分の事で精一杯です、きっと。

それだけ、あなたはうまかったのだから、その事を認めて 自分を誉めてやりましょう・・・よ。


<優等生という名の鎧を脱ぎ捨て・・・>
新しいお話<人間の哀しいサガ〜家庭は人生の勉強場〜>

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E-Mail:chizuko@ma.interbroad.or.jp

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