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医療の対象は、一人一人の病人である。正常(幸せな社会生活がいとなめる人と私は定義している)から何らかの形でずれた「個」に対してそのずれの本質と程度を診断して、一人一人に正常になるための援助をするのが医療の役割であろう。
教育は、正常な「集団」を対象として、集団としてのメリットを追求しているのではないかというのが、教育にはズブの素人である私の感触である。「集団」になじまないものが「おちこぼれ」として教育の場から疎外されてきたのは、否定しようもないことだからである。文化が進むにつれて、この特徴に変化が生じた。医療は、予防医学や社会医学を通じて「集団」の健康増進に意欲をみせ始めたし、教育もまた、ずれを示す「個」に手をさしのべるようになってきた。特殊教育は、まさにその変化のシンボルであり、教育と医療との接点といえる分野である。
「特殊教育研究センター設置に関する要項」の中でそこに備えるべき施設のリストを見たとき、これは医師がかかわらなくては活きて働かないと思ったのは、10年前である。障害児を対象とする小児療育センターの中に一体として包含したいという意見に違和感なく同意してくれたのが、当時指導課にいた岩本氏であった。「集団」としてのメリットより、「個」の状態に夫々対応するという医療的感覚が受け入れられる教育畑では、珍しい存在として印象に残った。
曲折はあったものの、今、県立病院と隣接する「小児療育センター」と不即不離の形で内容の充実した「福井県特殊教育センター」ができあがった。全国でもユニークな施設である。所長は岩本氏である。
文部省・厚生省の定めの中にどのような違いがあるにせよ、吾々の目的は唯一つ。今、目の前にいる障害をもった子どもの一人一人にかかわりあって、その子の幸せな社会参加を願うことである。この共通の目的に、力を合わせて進んでいける心の通いあったパートナーを持つことはうれしい限りである
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