知事選質問状 03年


福井県知事選挙立候補予定者
            様

2003.3.1日
在日外国人の参政権を考える会 福井


 私達「在日外国人の参政権を考える会 福井」は1991年福井県在住の在日韓国
人の方々が提訴された,いわゆる参政権福井訴訟を支援してきたグループです。
1996年からは公務員採用試験の国籍条項撤廃にも取り組んでいます。この間、民
族による差別や人権侵害の問題にも取り組んできました。

 ご存じのように、外国人参政権については、全国の非常に多数の自治体の議会で
参政権を認めることに賛成の決議がなされています。また訴訟においても地方参政
権は憲法が許容しているとの最高裁の判断が出されています。後は立法を待つ状態で
す。
 また、近年住民投票を外国籍住民が参加する形で行う自治体がでてきました。今
後ますます増えてくると予想されています。

 公務員採用時の国籍条項撤廃については、既に全国の都道府県の四分の一で廃
止されました。
またごく最近長野県では、全く採用後の条件をつけない真の完全撤廃を検討して
いると報道されています。もはや外国籍住民は「公の意志の形成に関与するので
排斥すべきもの」ではなく、「住民としての彼等の意見を吸い上げ、反映してい
くべきである」と位置付けられてきています。公権力の行使といわれるものにつ
いても、首長が公権力を行使するのであって他の者はこれに従うと考えられま
す。
 東京高裁は東京都が一律に外国籍職員の管理職受験を認めないのは違憲であるとの
判断を出しました。また 本県丸岡町では従来の「公権力の行使」にあたる行為を
「住民へのサービス」と位置付け、消防職を含めたすべての採用・任用を認める完全
撤廃が実現されました。
 

 そこで 今回の知事選に立候補の名乗りをあげられたあなたに質問をいたしま
す。栗田県政では、国籍条項撤廃の問題は全く取り上げられることはありません
でした。県政に新たな息吹を吹き込もうとしているあなたは以下の問題をどのよ
うに御考えでしょうか。
 

1. イギリス オーストリア、ニュージーランド アイルランドでは定住外国人に国
政参政権まで保障しています。日本では旧植民地出身者とその子孫を含む定住外国人
に対し、地方参政権のみが一時議論の対象となりましたが、現在はそれすら忘れさら
れています。参政権を持たない人間は政治的・社会的隷属状態を今も強いられていま
す。定住外国人の参政権についてあなたの立場を明確にしてください。(注 1)
 

2. 定住外国人の参政権が認められていない現在、どのように外国籍市民の意見を県
政に反映させるべきか、ご意見をお聞かせください。

3. 現在、福井県に職員採用にはなお国籍条項が存在し、一般事務職から外国籍職員
を排除していますが、その根拠となっている「当然の法理」(公の意志の形成と公権
力の行使には日本国籍が必要)についてどのように考えますか。

4. 職員採用・任用における国籍条項を完全に撤廃する意志をお持ちでしょうか。あ
なたのこの問題についての政策の詳細をお聞かせください。
 

(註 1) 国民主権だから国籍がないといけないと言う方は、元来「国民主権」
は「君主主権」に対する言葉であって「主権在民」と言った方がいいことに
御注意ください。 <BR> <BR>
また 公務員を選定し、これを罷免するのは国民固有の権利であるという言葉を
引用されようとする方は「固有」という言葉が元来「のみに限定する」の意味で
はなく 「もとよりある」という意味であったことに御注意下さい。
 ちなみにアメリカで出生すればアメリカ国籍を自動的に取得します。日本では
旧植民地出身者の5世でも参政権がないことに御注意下さい。
 


高木ぶんどう氏


1. 定住外国人については、少なくとも地方参政権(選挙権および被選挙
権)が認められるべきであると考える。
 地方分権には、集権的なこくに制度の機能不全を地方レベルの住民参加
によって補い、社会の連帯と結合を維持するという働きがあると考える。
このように考えると、居住により地域社会の一員である定住外国人に地方
参政権を与えることはむすろ望ましい。
 なお、定住外国人については、居住地の政治に参加する権利とともに母
国の文化や言語を尊重されるという権利も重要である定住外国人(特に日
本生まれのその子孫)に対する母国語教育にも力を入れたい。

2. 住民の意見を問うため、常設型の住民投票条例の創設と提案している
が、この条例は」、当然定住外国人を含むものと考えている。同じく、も
んじゅや敦賀3、4号機のあり方を問う住民投票についても定住外国人が選
挙人に含まれると考える。
 このほか先進県、政令市においては、外国人による諮問委員会が設置さ
れていることも承知している。県レベルがふさわしいか市町村レベルが良
いか、検討したい。またNPOなどの活動により、定住外国人の意見が積極
的に表明される機会が増えることを期待している。

3. 地方レベルにおいては、採用について制限を設ける必要はないと考え
る。むしろ、定住外国人の増加による住民ニーズの多様化に対応するため
にも、積極的に採用されるべきであると考える。

4. 職員採用については、国籍条項の完全撤廃が望ましいと考えている。
任用、昇任等についても原則として平等に取り扱うことが可能であるが、
例外規定が必要かどうかなど、今後問題点を検討したい。
 
 

西川 一誠氏

1.  定住外国人の参政権については国の根幹に関わる事柄であるので、
国の立法政策上の問題として、国会において十分議論する必要があると考
えていますが、一方で、国民、県民にも幅広い情報を提供し、議論を深め
る中で国民総意の形成につとめることが重要であると考えます。

2.  県政を進めていくうえでは、県内の各界各層の幅広い意見を集約す
ることが大変重要なことであると考えていますので、定住外国人の方も含
め、多くの県民の方々との直接対話を積極的に行いながら、県民本意の行
政を進めていきたいと考えています。

3. 国においては「公権力の行使又は公の意思の形成への参画にたずさわ
る公務員となるためには日本国籍を必要としそれ以外の公務員となるため
には必ずしも日本国籍を必要としない」という公務員の任用に関する基本
原則が示されております。
 国、県、市町村では、どのような職務が公権力の行使または公の意志の
形成にたずさわる公務に当たるのか、国、県、市町村では職務内容や組織
形態などにおいて異なる部分があるので慎重に検討していくべきものと考
えます。

4. 国際化が進展する中、外国人についても、各分野において平等に取り
扱われることが原則であると認識している。しかし、職員の採用や任用に
当たっては、上記の公務員の任用に関する基本原則をふまえつつ、どのよ
うな職であれば国政条項が撤廃できるか、 具体的に検討していきたいと
考えています。
 
 

山川知一郎氏


1. 定住外国人の参政権について、あなたの立場を説明してください。
  実質的な議論としては、一定の期間以上定住している外国人には、基
本的に参政権が付与されるべきだと思っています。国の主権に関わること
には、日本国民であることが必要というが、外国人が選挙で投票したから
といって、実質的に国の意志がねじ曲げられることがあるかというと、ほ
とんどないのではないか。そのことよりも、いまや、この社会のありよ
う、国のありようとして、広く、また歴史的な経過があり、長期にわたっ
て永住している在日韓国・朝鮮人と他の外国人を同列に考えていいのか、
分けて考えても、早急に解決するべきだと思っています。
 しかしながら、形式的には、国政における参政権は、憲法15条や公職選
挙法9条2項の規定があり、「日本国民」に限っている限り難しいかと思い
ます。また、地方における参政権についても、最高裁の判例でもいってい
るとおり、憲法上禁止されているわけではなく、定住外国人にも付与され
てしかるべきだとおもっていますが、 立法政策上の問題となるので 現
在では難しいかと思います。
 しかし、議論を起こし、国会を動かしていく為に、機会ある度にこの問
題について、発言していきたいと思います。
 

2. どのように外国籍市民の意見を県政に反映させるべきか
外国人の意見を集約・議論する場所をして、川崎市のような「外国人審
議会」を設置する必要があるかというと、一つの方法ではありますが、そ
こまでの必要はないと思います。
 参政権は、何も選挙権・被選挙権だけではなく、広く政治・行政の意思
形成過程に如何に参加できるかということだと考えると、改めて「公設」
するまでもなく、いろいろな意見を自治体首長がが直接聞いたり、議会が
取り上げて議論をするということは当然のことなので、外国人の方々、団
体からの意見・要望も他と同様に扱い、施策に反映できることが大事であ
り、わたしはそうしたいと思います。

3.「当然の法理」について
 法的な根拠がない「当然の法理」を持ち出すことで、実質的な議論を行
わない琴につながっています。
 「公の意思形成、公権力の行使」といっても「公」とは何かをかんがえ
なければならない。特に自治体においては「公」を構成している主体は
「住民」であり、等しく地域を形成し、安心して暮らせる地域をつくると
いうことでは、「国籍」の要件にいらない。さらに、最近は事実上多くの
「外国人労働者」が地域に暮らしており、安定・安心な地域社会の形成に
は、全ての「住民」が参加して「公の意志の形成」が行われる必要があり
ます。その意味では選挙権に限定することなく被選挙権・公務就役も含め
て「国籍」による制限をする必要はなく、広く合意形成が行われる方が良
いと考えています。

4. 職員採用・任用に於ける国籍条項の撤廃について
 国籍がなければ、支障がでるような自治体における業務はないと承知し
ているので「国籍」を要件にする必要はなく、採用でも任用でも早急に
「完全」に撤廃したいと思います。  



 
参政権を考える会 福井の3氏の回答に対する見解(要約)
高木ぶんどう氏
国政参政権に言及がないのは認められないとしているのだろう。なぜか。

県職員採用時の国籍条項撤廃の意見についてはある程度評価できる。「例
外規定」など  という言葉をなぜことさら持ち出すのか。

山川知一郎氏
参政権に対する意見は評価したい。議会を通じて外国籍住民の意見を反映
させるという見解は、参政権のない外国人とっては自分たちを真に代表す
る者がいないい議会を正当性に欠ける。その議会にどのように意見を反映
させるかが問題である。国籍条項撤廃については評価する。
西川一誠氏
国の見解や従来の制度を無批判に受け入れて、旧弊な官僚意識そのままの
回答である。議会は通常多数決で決定可能であるのに、なぜ外国人参政権
に限って「国民総意」が必要なのか。参政権が保障されない場合、外国籍
市民は政治的社会的隷従を強いられるという思いの質問の意味が通じてい
ない。21世紀の県政を担おうとする人の回答だろうか。