疥癬感染防止マニュアル   

2006.12改訂


原因、疥癬の性質を知り、疥癬感染症を治療し二次感染の予防に努める。

1原因
疥癬虫(ヒゼンダニ、大きさ0.2〜0.4mm)がヒトの皮膚内に寄生して起こる。卵は2〜3日で孵化し、3〜4日の幼虫を経て、若虫となる。この若虫から成虫に脱皮するまでおよそ5〜6日。幼虫、若虫は皮表を動き回り適当なくぼみや毛穴を見つけてそこに入り込むか、短い穴を掘って身を隠す。オスの成虫はメスを求めて活発に動き回り、交尾後、オスはまもなく死ぬ。メスは角質層内にトンネルを掘り、毎日2〜3個ずつ卵を産み続け、4〜6週生き続ける。
疥癬虫が体表から離れた場合には、25度・湿度90%で3日間、25度・湿度30%で2日間、12度・高湿度で14日間生存可能。50度では湿度に関係なく約10分間程度で死ぬ。


2病型
・ 通常の疥癬
・ ノルウェー疥癬 
感染力が極めて強い重症型の疥癬で、寄生する疥癬虫は通常の疥癬と同じヒゼンダニだがその数が100万〜200万匹と桁違いに多い。老齢、悪性腫瘍末期、重症感染症、栄養状態が悪いなど、免疫力が低下している患者や、免疫抑制剤やステロイド剤を投与されている患者に発生しやすい。疥癬と診断がつかず長期間ステロイド外用剤による治療を受け続けた場合にもノルウェー疥癬となりうる。
特徴的なのは皮膚症状で、骨の突き出した部位や四肢の関節の外側など圧迫や摩擦を受けやすい場所に、カキ殻状に重なった厚い角質の増殖が生じ、その中にはダニが層をなして生息している。3 症状

 かゆみは通常最も顕著な症状である。一般的にはかゆみは夜間に最も著明となる。かゆみの自覚は、感染後2週間以上、通常1ヶ月経ってから認められるが、再感染の場合には比較的短期間のこともある。
 赤い小さなぽつぽつ、大きなしこり、がさがさが体、腕、脚などに見られるほか、指の股、手のひら、足の裏などの水ぶくれ、よく手首などに見られる疥癬トンネル(3〜6ミリくらいの細長い皮疹)などが特徴的である。男性では、陰嚢に赤褐色のしこりがよくみられる。4 感染経路
 感染経路には、直接感染と間接感染の2種類がある。間接感染は疥癬患者の落とした皮膚の垢やフケにいる疥癬虫、虫卵によるものである。ノルウェー疥癬の場合、多くの疥癬虫、虫卵の入った垢、フケをまき散らす危険があるため特に気をつける必要がある。普通の疥癬とノルウェー疥癬の違い
 
普通の疥癬
  ノルウェー疥癬
直接経路
直接接触
直接接触
間接経路;人的経路
 
同室患者、介護者、医療従事者、掃除係、見舞客
    仲介物体
 
下着、寝具、衣類、医療器具、機械、介護用具、環境用具
    患者移動
 
施設と病院間、施設病院内


5 日常生活の注意事項
 
普通の疥癬
ノルウェー疥癬
入浴、シャワー
毎日
毎日 (順番は最後)
下着・寝衣交換
毎日
毎日
シーツ交換
毎日が望ましい
毎日
洗濯
 
 
 
普通
 
 
 
熱湯(60度以上)に30分つけ洗濯
天日干し、乾燥機にて完全に乾かす
アイロンも有効
食器・箸
普通
熱湯に10分つけ、洗う
部屋
普通
個室隔離
掃除
丁寧な清掃が必要
使い捨て雑巾、モップ等使用
殺虫スプレー、ピレスロイド系燻煙等使用
治療後の部屋の掃除
普通
10日間放置
医療器具・介護用具
直接触れた物は消毒用アルコールで拭く
消毒用アルコールで全体を拭く。殺虫剤散布、お湯かアルコールで拭く


* 普通疥癬の場合は、間接経路では感染しにくいため日常生活ではそれほど支障は出ないが、ノルウェー疥癬にならないように注意が必要


6 症状が出た時
 体幹部の掻痒感を訴え、体、腕、脚などに湿疹を発見したら、まず、疥癬検査を行う。
  検査技師に検査依頼を行う。
    患者氏名、病室、部位、湿疹の状況について連絡。
    発見当日、検査してもらうまでは入浴、清拭は控える。(当日検査終了後、入浴可能)
    結果状況にて、担当医へ報告する。(臨床検査技師もしくは師長)

7 結果がでたら
①. 結果が疥癬の場合、家族へ疥癬について、洗濯、面会の方法を説明する【家族用資料添付】
②. 本人又は家族の許可をもらい、感染者の髪を短く刈る(当院で疥癬と認められた場合は、すぐに刈っておく)8 治療
① ストロメクトール(3mg)の投与開始。
   患者体重毎の1回あたりの投与量
        体重( kg)  3mg錠剤
           15-24    1 錠           25-35      2 錠
           36-50      3 錠
           51-65      4 錠
           66-79      5 錠


② 基本的に、空腹時に水での服用である。
 (高脂肪食後に内服すると、薬剤の血中濃度が約2.6倍も上がるとされてい るので、副作用防止に為にも必ず、空腹時服薬する必要がある)
③ 高齢の方で錠剤が飲み込めない場合や経管栄養/経腸栄養の方は、投与直前に白湯で溶解して投与する。(錠剤は、2分程度で崩壊するとされている)
④ 1回服薬することで、2週間後に疥癬症状があるか確認を行う。
   (特徴的な皮疹があれば、検査確認を行う。掻痒症状のみ残ることもあるので、漫然と内服を服用しないことが原則である。)
⑤ 症状があければ(検査結果もマイナスなら)内服終了である。
⑥ 服薬開始前後の血液検査を行い、副作用症状が見られていないか確認を行う。(検査項目については、主治医確認)
⑦ 掻痒症状に対しては、オイラックス軟膏の塗布を行っていく。